紫地 桜に滝鼓模様小袖 江戸後期文化文政(1804〜1829)
背から肩に遠山の連山を重ね下前後身頃と下前前身頃に垂直に落ちる滝が振り分けられ上前にも滝口に衿先から滝が落ち前景に枝を張った桜を配し裾には滝壷から流れ出る波を配し模様の構成も静かな遠山から激しい滝の動きこれをたなびく霞や桜で抑えた木つぼには鼓の波があしらってある この文様は能の鼓の滝から採った模様であり御門が臣下に命じて山々の桜の様子を調べに行かせる臣下は命を奉じて摂津の国の鼓の滝へ赴きそこで年老いた樵夫に会うこれが実は山神で物語りの後忽然と滝壷へ消え後ジテとなって姿を現わして舞うと言うすじの物語りであります 江戸後期の御殿風の小袖に多い能に取材した模様であります 文学的な意味が非常に巧みな象徴性をもって表されている品のよい小袖であります
 白木染匠資料室所蔵