有職〈ユウソク〉文様
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現在私たちが知ることのできる、最も古い染織文様は、法隆寺や正倉院宝庫に秘蔵されてきた、「上代染織文様」とされています。
これは飛鳥時代や奈良時代に中国(隋・唐)から伝えられたもので、当時これを使用できるのは、貴族階級の貴族階級の者に限られていました。一般庶民には見ることすらできない高貴なものとされ、長い間貴族の中でだけ受け継がれていきました。
この「上代染織文様 」は、中国風のスタイルをそのまま伝えたものでしたが、平安時代以後、貴族の衣生活に合うように工夫され、和様化します。その和様化された文様を「有職文様」と呼んでいます。日本最古の貴族専用の文様も、和様化された後、鎌倉時代の頃には武家にも使われ、次いで一般にも使用されるようになりました。 |
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名物裂系の文様
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「名物裂」は、能が一応完成された、室町から桃山、江戸にかけて、中国(宋〜明)から輸入された織りを主とした染織品です。金襴〈キンラン〉や緞子〈ドンス〉、間道〈カンドウ〉などがあり、当時の茶人たちに珍重され、茶道の名器、名物の茶入れや茶碗などの支覆に用いられたことで、この名がつきました。
同じ中国からの輸入品である「上代裂」とは異なり、始めから、広く一般的に使用されていたことで、近世日本の染織文様形式の1つの母体となりました。
初期の能装束は、渡来の裂類をそのまま用いたものも多かったようですが、その後、織りの技術も習得され、日本でも金襴や緞子が織り出されるようになります。
日本の文様において、また織物技術の上からも、「名物裂」の渡来は、大きな影響力をもつものでした。 |
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