春秋御殿御所解文様 江戸後期文化文政(1804〜1829)
この総模様の御殿御所解振袖は公家や将軍家大名家の姫君や高位の人の振袖と思われます。まさに文化文政の最高の作品と言えましょう。この振袖一領の中には着用者の教養が至る所に表現されております。王朝を描いた艶やかな四季折々の風景の美しさの中に永久不変を意味する常磐木に絡みつく藤、右袖の上には葛屋に琴が置いてあり、「峯の嵐か松風か」の小督の局を表したものでしょうか、緋色の組を飜がえして飛ぶ鷹の姿は鷹狩りが秋から冬にかけて行なわれる行事なので、季節を表わし、御所車と扉を閉ざした枝折戸が、「通小町」で知られた洛北市原野の小野の小町のもとへ通いつめた深草少将のロマンを表現したものではないでしょうか。文学的内容のある品格のある作品でございましょう。 白木染匠資料室所蔵