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金彩 | ||||||||||
金彩の道具類 |
金彩は、金加工とも呼ばれ、染め上がった生地に金や銀の箔、金粉等を接着加工する技術です。これは友禅染をより華やかに表現するために行う工程で、必要以上の加飾は品格をそこない、美しさも半減させてしまいます。染と金彩、そして次の刺繍が調和してこそ、素晴らしい友禅染が出来上がり、技術の集大成となるわけです。 |
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フェルト状の布を机に用意します。これは「縁蓋〈エンブタ〉」と呼ばれる作業をしたり、「金線くくり」を行う時に、作業しやすくするためです。 また、金彩加工は、箔や金粉など、非常に軽い材料を扱うので、室内に風が入らないようにします。
金くくりは、「金線描き」・「筒描き」とも呼ばれ、模様の中で糸目糊置したあとの、白くあいた部分を金線でなぞっていく技法全般を指します。糸目糊で使った筒と同じ形体の筒を用い、糊のかわりに金線(糊)を置いていきます。 <ポイント> 金線糊は、「金糊」と呼ぶ油性のアクリル系合成樹脂に金属粉を混ぜた糊で、金糊に対し30〜50パーセントの金属粉を融合するのが一般的です。金属粉が少ないと光沢が弱くなり、接着力が高まります。金属粉が多いと光沢が強くなり、接着力が弱まるので、30〜50パーセントの範囲内で好みの配合にします。 また、金糊の粘度が強くて混合しにくい時や、筒から糊が出にくい場合、酢酸アミルやシンナーを溶剤に用います。ゴム糊より少しやわらかい程度の粘度が適当でしょう。 <ポイント> 金糊でくくっていく場合、もとの糸目より太くなったり、細くなったりしないように注意しましょう。太いと品格がなくなり、細ければ効果が薄れます。バランスよく置くことが大切です。
押し箔は通称「ベタ箔」と呼ばれ、加工する部分全体に、箔や砂子を接着する技法です。 まず、加工したい部分全体に接着剤を筆で均一に塗り、その上に箔を置き、綿花などで軽く押さえて密着させます。この時、箔がシワにならないように、箔ばさみなどで扱いましょう。箔が貼れたら後は自然乾燥させます。 また、箔にかわって、砂子を大量に付ければ、砂子詰め加工になります。乾燥した後、余分な箔や砂子はブラシで取り除きます。 <ポイント> 接着剤を生地に塗る筆は、毛がしっかりした腰の強いものを使用します
摺箔は、金彩の中でも、最も古くからある技法で、桃山時代からすでに行われていました。この技法は、模様の型紙を用いて表現する技法なので、「型押し」・「小紋押し」とも呼ばれています。 適当な模様(小紋など)の型紙を用意し、シワにならないように水に浸けておきます。机の上にフェルト布を敷き、その上に加工する生地を置いて作業を行います。箔加工したい生地の部分にビニールテープなどの接着テープを貼りつけ、縁蓋〈エンブタ〉とします。摺箔する模様の輪郭をナイフで切り抜き、水気を切った型紙(古新聞などではさむ)を生地の上に模様がズレないように置き、その上に接着剤を駒ベラといわれる道具を使い型置きします。型置きが終われば型紙をそっとはがし、接着剤の上に箔を置き綿花で軽く押さえて接着します。この時強く押すと、型置きした模様がつぶれてしまうので注意しましょう。接着剤が完全に乾燥すればブラシで余分な箔を取り除きます。 <ポイント> 模様の輪郭をナイフで切り抜く時、生地を絶対切らないように注意しましょう。そのためには、カッターナイフの刃は鋭いものを用います。刃が鈍っているとつい力が入り、生地を傷つけてしまいます。 <ポイント> 型置きに使った型紙は、接着剤を置いた後、もとの水槽にすぐ戻しましょう。接着剤によっては、すぐに洗わないと水で溶けなくなるものもあるので確認しておきましょう。
<ポイント> 接着剤の置き方や砂子の取り扱い方法、乾燥後の処理等は、摺箔の時と同じです。 <ポイント> 砂子を振る場合、出来上がった時のイメージを明確にしておきます。不明確なままで行うと、つい多く振りすぎて、砂子詰めの表現になってしまうので注意しましょう。 また、ぼかし表現をする時は、砂子を接着剤の少し外側に落とし、筆か綿花で掃き寄せるようにすると良いでしょう。 これらの技法の応用で、金・銀・色箔などを使い、ぼかし合わせの表現をつくります。
色紙や短冊、扇面によく見られる表現で、箔をさいの目に切った形(切箔)や、細かい糸状に切ったもの(野毛〈ノゲ〉)を、不規則に撒〈マ〉いたように表現する技法で、砂子技法と一体になった時、はじめて素晴らしいものになります。そのためには、高度な技能と経験が要求されます。 |